修理をしていると泥沼にはまることが、度々あります。
初めは、簡単な作業と手を付けると、作業を進めるほど、問題が複雑化するのです。
妻がLEDデスクライトの調子が悪くなったと言ってきたので、状態を見ると、スイッチが利かず、消灯しなくなっていました。
それでも、最初は、何回か押せば消灯していましたが、そのうち、点滅するようになったのです。
おそらく、スイッチの接触不良だと高を括り、安易に修理を引き受けました。
しかし、それが予想外に大変な作業だったのです。
するとアルミダイカストの台座がバキバキに割れています。
そういえば、支柱がグラグラしていました。
やれやれ。
プリント基板で、補修しました。
それにしても、アルミダイカストの表面は、細かいひびが多数入っています。
素人目にも、この鋳造の品質が良くないのが分かります。
状態を再度確認するために、スイッチを何回か押してみると、スイッチが崩壊してしまいました。
やれやれ。
今度は、このスイッチを直さなければなりません。
いずれ、今回の故障はスイッチの問題と踏んでいましたから、内部の様子が見れて良かったと自分に言い聞かせ、接点の様子を見ることにしました。
特に、接点には錆や損傷はありません。
今度こそ本題のスイッチを調べます。
電源を入れると、いきなり、点灯します。
そしてスイッチを押しても、消灯しません。
テスターで、スイッチの電圧を調べると、押せば、電圧が0Vになるので、スイッチは正常に動作しているようです。
そうすると、制御基板の問題となります。
やれやれ。
基板は、ロジックICとその電源を供給する3端子IC、そして、チップ素子からなります。
このロジックICは10進ジョンソンカウンタで、タクトスイッチでオルタネート操作を実現するのに使っています。
まず、テスターで、電源電圧を測ります。
ほぼ、24Vで問題なさそうです。
次に3端子の出力を測ります。
3Vぐらいで、規定の5Vが出ていません。
3端子に高負荷がかかっている可能性があります。
基板上の素子を指で触ってみます。
すると、チップトランジスタが発熱しています。明らかに異常な状態です。
コレクタ、エミッター間をチェックしてみると、本来導通しないはずが、100Ωの値を示します。
これでは、ベース電流に係わらず、常にON状態になってしまいます。
これで、消灯にならない理由が分かりました。
このトランジスタを交換しなければなりません。
手元にチップトランジスタはないので、代替品を探します。
まず、回路からNPN型であることが分かります。
大きくなるので、基板からはみ出ましたが、本体には収まりそうです。
早速、電源を入れてみます。
いきなり点灯することはなくなりましたが、今度は、スイッチを押しても点灯しません。
やれやれ。
取りあえず、テスターでベース電圧を測定します。
電圧は出ていません。スイッチを押しても、変化はありません。
そこでロジックICの電源電圧を測定すると20V以上を示しています。
本来は5Vのはずです。
これは、やばい。
背筋がぞわっとしながら状況を整理しようとした時、変な臭いがしてきました。
あっ。
慌てて、基板上の部品を触ってみると、今度は、3端子素子が高温になっています。
しまった。
慌てて電源を切ろうとしましたが、時すでに遅く、バッチッと音と共に3端子から火花が散りました。
やれやれ。
それから、ロジックICも破損している可能性が高いです。
これまでの状況を振り返ると、ひとつの答えが浮かびました。
ACアダプターです。
無数のスパイクが出ています。
やっぱり。
このスパイクが、トランジスタを破壊したのです。
破壊されたトランジスタは結果的にスパイクをバイパス・吸収し、ACアダプタは一時的に電圧制御を取り戻します。
トランジスタを交換すると、それまで破壊されたトランジスタでバイパスされていたスパイクが3端子に降りかかり、正しく電圧制御できず、ロジックICに規定以上の電圧を掛けます。
規定以上の電圧はロジックIC内の保護ダイオードを経由して大量に流れ、3端子はこれを支えきれず、加熱・破壊。
結局、ほとんどの能動部品を失ってしまいました。
ACアダプタ出力のスパイクは、おそらく内部の平滑コンデンサのパンクでしょう。
以前は、この手のACアダプタを修理していましたが、この時点で正直、疲れました。
ACアダプタ、3端子、ロジックIC、すべて、交換します。
ネットで購入。
古い部品を取り外します。
取り外した部品と新しい部品です。
新旧のACアダプタです。
念のため元のものより容量が大きいものを購入したので、少し大きくなっています。
無事、スイッチによる点灯/消灯ができました。
今回の修理は、やればやるほど次々に部品が壊れてしまう、まるで泥沼にはまってしまったような一件でした。
やれやれ。