修理を重ねていると、自分の推測が次々と外れ、遠回りをすることがしばしばあります。
後から考えると、なぜ最初にそこにたどり着けなかったかと悔しい思いをしますが、対応をしている時点では、それなりの根拠があり、その推測に疑いもなく進んでいたのです。
早速、このマウスを直してみることにしました。
ユーザーによる修理はメーカーの保証・修理が受けられなくなる可能性があります。
充電が開始されると、マウスのLEDが緑色にほたる点滅します。
しかし、問題のマウスは一瞬緑色に点灯したかと思うと、すぐに赤色に点滅します。
この点滅は充電に失敗したことを意味します。
新しいバッテリーに交換しましたが、症状は直りません。
次にバッテリーの接点の不良を疑いました。
これを確かめるには、分解しなければなりません。
まず、バッテリーホルダーの底にあるネジ(トルクスT8)を外します。
上カバーのスイッチ類を繋いでいるケーブルを外します。
一番下の基盤と上の基盤を繋いでいるフィルムケーブルを外します。
コネクタの白いストッパーを上にずらすとケーブルが外れます。
すると、電圧が測定できません。
やはり接点のはんだ不良だと推測通りだったことに内心嬉しくなりました。
これで直ったと確信しましました。ところがテストした結果、症状は直っていません。
なぜと思いましたが、単に半田の表面が酸化していただけだったようです。
カシメを強くしてみるとLEDの緑点灯時間が若干長くなります。
これが問題だったのかと今度こそ故障個所を発見できたと確信しました。
少し行き詰った感があったので、一度、バッテリーの接続不良の線から離れることにしました。
そう考えると、接点部分が少し黄色がかって見えます。
前のマウスがスイッチの接点不良だったことを思いだし、この接点を磨くことにしました。
再びテストしてみると、一瞬ほたる点滅になりました。
これだったのかと、今度はマウス側の接点も磨いてみましたが、症状は元に戻ってしまいました。
結局この接点の問題ではなかったようです。念のため接続した状態で強く指で端子を押えてみました。押える力は一定なのにLEDの表示が変化します。
何に反応しているのか不思議でしたが、よく見るとマウスを持ち上げている腕が微妙に動き、ケーブルが振動しています。
この時、すべての謎が解けました。
原因はケーブルの断線です。完全に切れた状態ではなく、繋がったり切れたりが頻繁に起きている状態です。
そう考えると、今までの現象がすべて説明がつきます。
対処する度に直ったり元に戻ったりしていましたが、これは、その対処の結果ではなく、ケーブルの状態だったのです。
あまりに単純な原因だったことに疲れがどっと出ましたが、気を取り直しケーブルの断線を直すことにしました。
まず、断線している付近を切断します。
最終的にヒシチューブを被せるので、ブッシュは無くてもかまいません。
ここが断線していたようです。
抜けた線の長さから断線箇所を特定し、そこまで切断します。
熱で被覆が縮んでしまいました。
ずらした被覆が元に戻らないようにつまんでおきます。私はステンレス製のピンチを使いました。これは何かと便利でよく使います。
コードを接続する前に導線の被覆用のヒシチューブをはめます。
ヒシチューブと被覆に熱が伝わらないようにヒートクリップでつまみ、半田で導線を繋ぎます。
端子には強力な磁石が付いており、半田ごてを近づけると吸い付いてしまいます。
端子の一部を溶かしてしまいました。
これで完成です。
テストしてみると、見事に直っていました。
分かってみれば単純な原因でしたが、最初に浮かんだ推測に振り回され、かなりの遠回りとなってしまいました。