ラジオ(SONY ICF-7600D)の修理

投稿 金 3/17 17:43:48 2023 | オーディオ・ビジュアル | hotall

必ず訪れるという巨大地震。
災害への備えは必用です。
防災用品の一つに携帯ラジオがありますが、我家には、まともに動くものがありません。




SONY ICF-7600D。40年前に購入し、長く使っていましたが、感度が落ち、ボタンのいくつかは利かなくなったので、今ではすっかり使わなくなっていました。

前回のステレオチューナーのコンデンサ交換に味を占め、このラジオもリフレッシュすることにしました。

この文書は個人的なものであり、読者による修理を推奨するものではなく、内容について一切の責任を負いかねます。



まずは、電解コンデンサーを交換します。
中を開け、すべてのコンデンサの容量と耐圧を調べます。

蓋を開けると、メイン基板が現れます。
チューナーとは真逆に、小さな基板に小さな部品が、所狭しと詰め込まれています。中には、差し込めない部品が、リード線を引き回して、空いた隙間に押し込まれるように配置されています。
よくもここまで、といった感じです。軽薄短小が得意だったSONYの技ということでしょうか。
密着した部品の表記を、苦労しながら読み取りました。

前回と同様に、なるべくオーディオ用の電解コンデンサに交換しようとしましたが、小型の低電圧のものはなく、より形状の大きなものを購入しました。
いよいよ、交換作業です。

形状が大きくなった分、そのままでは実装できないものもでてきます。

あるものは横向きに配置し、あるものは空いた隙間に配置して、リード線を引き回しました。

それでも入らない場合は、既存の部品(抵抗)を背面に移動したり、ケースを削ったりしました。
苦労の末、交換作業を終えました。
元通りに組立て、動作確認をします。
ところが、電源ボタンを押しても全く動きません。

部品の確認、はんだ状態の確認をし、更には半田が劣化している部分の再半田をしましたが、変化はありませんでした。

半ば諦めかけた時、ふと、制御基板を動かしたとき、一瞬電源が入ったのです。
これは。

制御基板とメイン基板を繋いでいるフィルムケーブルを疑い、ケーブルの導通チェックをすると、2本が断線していることが判明しました。

どうやら、作業中に負荷がかかり、フィルムケーブルのパターンが切れてしまったようです。

ケーブルの断線しているパターンのレジストを剥がし、電線でバイパスすると見事に電源が入りました。

ボタンの一部は相変わらず利かず、ダイレクトチューニングはできませんが、マニュアルチューニングで受信はできるようになりました。

我家はコンクリートの集合住宅なので、電波が入りにくく、まともな受信は諦めていましたが、思いの外、多くの放送局が受信できるようになりました。
低下していた感度が元に戻ったようです。

更に、薄くなった液晶表示も改善されました。
これで当初の目的の大半は達成できたのですが、欲が出てきました。

ボタンを直して、ダイレクトチューニングができるようにしたい。

家電のリモコンで、ボタンが利かなくなることは多々あります。
大概は、メンブレンスイッチの導電ゴムの劣化です。

まずは、導電ゴムの導通チェックをします。
制御基板上のスイッチのシリコンシートを剥がします。

ん?、スイッチの一部にアルミ箔が貼り付けてありました。

そういえば、以前にもボタンが利かなくて、アルミ箔で対処したことを思い出しました。
今回利かないボタンにもアルミ箔が貼り付けてあります。

では、導電ゴムの劣化が原因ではないのでしょうか。

念のため、アルミ箔を剥がして導通チェックをしました。
正常なボタンは導通しますが、利かないボタンは、やはり導通しません。

また、アルミ箔を貼ってもいいのですが、今回は鉛筆の黒炭を塗布することにしました。

鉛筆より粒度の細かいシャーペンの芯を使います。

導電ゴムの上で、シャーペンの芯をカッターで削ります。
軽く削る方が細かい粉末になります。

削った粉をシャーペンのキャップ側で押し回しながら塗り広げます。

一面むらなく銀色に光るようになるまで、こすりつけます。

飛び散った、余分な黒炭はふき取ります。
再度組み上げて、動作確認しましたが、相変わらずボタンが利きません。
どうやら基板側の問題のようです。

まずは、導電塗料の接点をクリーニングします。
消しゴムを使ってみました。

動作確認しましたが、変化なしです。

接点の抵抗を調べてみると、300Ωあります。

接点復活材を塗布してみました。

測定すると10Ωまで下がりましたが、症状は改善しませんでした。

さて、今度は基板のパターンの導通チェックをすると、スルホールの前後で断線しているのがわかりました。

虫眼鏡で見ると、確かにスルホールが飛び出し、パターンが切れているように思えます。
断線個所をバイパスします。

パターンのレジストを剥がします。

剥がした個所に予備はんだをします。

電線で剥がしたパターンとスルホールと繋ぎます。

動作確認をすると、一方のボタンは利くようになりました。
しかしもう一方は利きません。

色々試してみると、外からは見えませんが、どうやら導電塗料の下でパターンとの剥がれがあるようです。

導電塗料を購入してもいいのですが、今回は、より線からほどいた細い線で、にわか作りの接点を貼り付けました。
基板とはレジストで固定しました。
動作確認の結果、ボタンが利くようになりました。

この不具合の原因は、まず、導電ゴムの劣化で、ボタンが利きにくくなり、強く押すようになったため、基板がたわみ、固いスルホールと柔らかいパターンの間で、断線を引き起こした、というところでしょうか。


これで、懸案の不具合はほぼ解決しました。
ただ、時計の液晶が真っ黒に滲んでいるのですが、これはどうすることもできません。通常の使用には問題ないので、そのままにしておきます。

このラジオは防災用品として使えそうです。

ラジオから流れる音は決して高音質ではありませんが、なぜか懐かしさと暖かさが心を癒します。
ノイズや歪み、帯域の狭さも、ラジオという楽器の音色、ということかもしれません。
しばらくは、日常的に楽しみます。

さて、今回も交換した古いコンデンサの性能を調べてみました。

規格容量(μF)に対する容量誤差(%)です。
やはり容量の大きなものは誤差が大きくなっています。

規格容量(μF)に対する内部抵抗(Ω)です。
これも容量の小さなものの劣化が進んでいます。

ステレオチューナー(KENWOOD KT-727)コンデンサ交換

投稿 木 3/16 15:55:36 2023 | オーディオ・ビジュアル | hotall

オーディオ機器は、そのほとんどがデジタルで構成されるようになり、低雑音、低歪み、広帯域が当たり前になりました。
それでも、より高音質が求められるのは、際限のない人間の欲望なのでしょうか。




我家のステレオは、壊れない限り使い続けています。
チューナーも30年前から使っている年代物です。

最近、勝手にシークされ、選曲が外れてしまう不具合が発生するようになりました。
そろそろ寿命かなと思いましたが、直してみることにしたのです。

この文書は個人的なものであり、読者による修理を推奨するものではなく、内容について一切の責任を負いかねます。



実は、数年前にプリセットが消える不具合があり、これがメモリ保持用のコンデンサの問題であることを突き止め、交換したことがあるのです。

数多くの汎用電子部品の中で、有限寿命が明示されているのは電解コンデンサくらいです。
メーカサイトでは15年の寿命で設計するようにと書かれているものもあるので、30年前の機器では、そろそろ寿命を迎えても不思議ではありません。

また、一つのコンデンサが劣化したということは、他にも劣化したコンデンサがあるはずだと考えたのです。

交換するなら、すべての電解コンデンサを交換してしまいます。

まずは、中を開けて、使われているコンデンサをすべて調べます。
カバーを開けれると、基板が現れます。

メイン基板です。

最近の機器には珍しく、余裕のある部品配置です。
整然とした個々部品の配置、矩形にシルクスクリーンで囲われた機能ブロック、この様子は、計画的に開発された都市のように美しく感じます。

こちらは電源基板です。

リニア電源です。
大容量の電解コンデンサが並んでいます。

さて、これらのコンデンサの容量と耐圧を書き出して、新しい部品を購入します。

もともと使われている部品は汎用品ですが、奮発して新しい部品はオーディオ用にしました。

古いコンデンサを外し、新しいコンデンサに交換します。

数が多いので二日がかりになりました。

以前交換したメモリ保持用のコンデンサです。

手持ちの部品では容量が足りなかったので、複数をパラに繋いでいます。

これも元の容量と同じ新しい部品に交換しました。

すべての部品を交換しました。

元のコンデンサが地味な白/紺色でしたが、オーディオ用コンデンサは綺麗な蛍光色なので、華やかになりました。

ベークライト基板に、様々な形状の部品が整然と並ぶ姿は、昭和の電子回路の美学を感じます。

最近のチップ部品が所狭しと並ぶ基板の、いかにもロボットが組み立てた、無機質な感じとは全く異なります。
再度組み立て、動作させてみました。
不具合はなくなり、心なしか音がクリアになったように感じます。

音源としては、メリットも少なくなったチューナーですが、柔らかな音質は心地よく聞こえます。
アナログレコードが流行っている昨今ですので、チューナーも見直される時代がくるかもしれません。

取り外した、古い部品です。

沢山あります。
折角なので、性能を測定してみました。
DE-5000を使い1KHzで測定しました。

まずは容量です。

グラフは、規格容量(μF)に対する誤差を%表示しています。
0%から大きく外れているのが劣化した部品です。
容量が大きいほど、劣化が激しいことがわかります。

続いては内部抵抗です。

全体的に一様に左上がりになっています。
これは、測定機器の特性やコンデンサ自身の特性もあると思いますが、低い値を結んだ傾向線から外れているのが劣化した部品なのでしょう。

容量の少ない部品ほど、劣化しているものが多いです。
どちらも、結構、ばらつき(縦方向に広がっている)が出ているというのは、一様に部品の劣化が進んでいると云えます。
交換時期だったようです。