オーディオ機器は、そのほとんどがデジタルで構成されるようになり、低雑音、低歪み、広帯域が当たり前になりました。
それでも、より高音質が求められるのは、際限のない人間の欲望なのでしょうか。
我家のステレオは、壊れない限り使い続けています。
チューナーも30年前から使っている年代物です。
最近、勝手にシークされ、選曲が外れてしまう不具合が発生するようになりました。
そろそろ寿命かなと思いましたが、直してみることにしたのです。
実は、数年前にプリセットが消える不具合があり、これがメモリ保持用のコンデンサの問題であることを突き止め、交換したことがあるのです。
数多くの汎用電子部品の中で、有限寿命が明示されているのは電解コンデンサくらいです。
メーカサイトでは15年の寿命で設計するようにと書かれているものもあるので、30年前の機器では、そろそろ寿命を迎えても不思議ではありません。
また、一つのコンデンサが劣化したということは、他にも劣化したコンデンサがあるはずだと考えたのです。
交換するなら、すべての電解コンデンサを交換してしまいます。
まずは、中を開けて、使われているコンデンサをすべて調べます。
カバーを開けれると、基板が現れます。
最近の機器には珍しく、余裕のある部品配置です。
整然とした個々部品の配置、矩形にシルクスクリーンで囲われた機能ブロック、この様子は、計画的に開発された都市のように美しく感じます。
リニア電源です。
大容量の電解コンデンサが並んでいます。
もともと使われている部品は汎用品ですが、奮発して新しい部品はオーディオ用にしました。
数が多いので二日がかりになりました。
手持ちの部品では容量が足りなかったので、複数をパラに繋いでいます。
元のコンデンサが地味な白/紺色でしたが、オーディオ用コンデンサは綺麗な蛍光色なので、華やかになりました。
最近のチップ部品が所狭しと並ぶ基板の、いかにもロボットが組み立てた、無機質な感じとは全く異なります。
再度組み立て、動作させてみました。
不具合はなくなり、心なしか音がクリアになったように感じます。
音源としては、メリットも少なくなったチューナーですが、柔らかな音質は心地よく聞こえます。
アナログレコードが流行っている昨今ですので、チューナーも見直される時代がくるかもしれません。
沢山あります。
折角なので、性能を測定してみました。
DE-5000を使い1KHzで測定しました。
グラフは、規格容量(μF)に対する誤差を%表示しています。
0%から大きく外れているのが劣化した部品です。
容量が大きいほど、劣化が激しいことがわかります。
全体的に一様に左上がりになっています。
これは、測定機器の特性やコンデンサ自身の特性もあると思いますが、低い値を結んだ傾向線から外れているのが劣化した部品なのでしょう。
容量の少ない部品ほど、劣化しているものが多いです。
どちらも、結構、ばらつき(縦方向に広がっている)が出ているというのは、一様に部品の劣化が進んでいると云えます。
交換時期だったようです。