3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のヒーテッドベッドのガタ

投稿 土 11/ 9 15:34:24 2013 | デジタル工作機 | hotall

おかしなもので、物を作り終えた後、気持ちに余裕が出てくると、作ったものの粗を探し始めます。
粗が見つかると、現状でも問題なく使えるのに、その粗が気になって頭から離れなくなります。

これは改善を進める前向きな思考形態でもありますが、不必要な手直しによって壊してしまう危険な考えでもあります。




苦労しながらも3Dプリンタが完成して数か月が経過し、最近では安定して出力できるようになりました。
そんなある日、ふとヒーテッドベッドを触ると、ベッドと固定しているねじとの間でガタがあることに気が付きました。

HuxleyのヒーテッドベッドはY軸移動台座と3つのネジで繋がっています。
ホットエンドがZ軸移動においてオーバーランしてヒーテッドベッドに衝突しても損傷しないように、台座との間はネジで完全に固定しているのではなく、下方向についてはネジに通したスプリングで支えるようになっています。

したがって、このネジとベッド側のネジ穴に遊びがあると、今回のように水平方向のガタになってしまいます。
現状はおそらく、ネジの頭とベッドの摩擦のお蔭で目に見えてガタが発生することがないのでしょう。

しかし、重いベッドを高速に移動させているので、実際には多少は滑っているのかもしれません。
そう考えると、折角、苦労して調整したヒーテッドベッドですが、これを放置できなくなりました。





ガタを発見したのは、3つのネジのうち一本で支えている左側のネジです。
二本で支えている右側のネジの方は、ガタは確認できません。

苦労して調整し、ネジロックで固定したベッドですが、苦渋の気持ちで取り外しました。




早速、ネジ穴の径を測定しました。
3.1mmです。0.1mm大きい穴です。

ネジ穴は取り付けやすいように、ある程度の遊びを設けることがあるので、意図的に大きくしているのかもしれません。




一方、ネジの方は太さが2.9mmで、0.1mm細いです。

ネジ山のとがりには丸みが発生するので、M3ネジであっても有効径は3mmより小さくなります。ISO規格では2.773と定められているので、0.2mmぐらいは小さくても不思議ではありません。

実測から、ネジ穴とネジとの遊びは0.2mmであり、これがガタの原因でした。
したがって、この遊びを少なくする必要があります。




まずネジ穴を調整します。

今回はブッシュをはめることにしました。
取り寄せたブッシュはポリアセタール製です。




内径を測定すると、ほぼ3mm丁度でした。

耐熱性が気になるところですが、ベッドのネジ穴付近にはLEDが実装されており、LEDの耐熱が80-90度とポリアセタールの耐熱温度より低いので問題なしと考えました。




ネジは頭の方をネジ切りしていないタイプにし、力を掛けやすいように六角穴付ボルトにしました。

径を測定すると2.95mmです。
ネジ切りしていないので、誤差が少ないようです。

これで0.2mmあったネジとネジ穴の遊びは、0.05mmに縮小することができます。




ベッドのネジ穴にブッシュを挿入するために穴を広げます。

ハンドリーマーを使いベッドの裏から少しずつ広げます。
広げすぎないように少し広げてはブッシュをはめてみるを繰り返します。




バリを取った後、広げた穴にブッシュをはめます。




右側のネジ穴は底板との干渉があるので、縁をペンチで欠きます。




右側のネジ穴にもブッシュをはまめます。




ベッドを新しいネジで元通りに組み付け、高さと水平を調整します。

効果を確かめようとベッドに触ってみると、ガタは皆無でした。
0.05mmあった遊びも、ボルト位置の誤差や傾きなどとの作用でガタがなくなるようです。




今回の結果には満足したのですが、作業中、冷却ファンに触れてしまい羽根を破損してしまいました。

これが今回の改善の代償となってしまいました。
完成品に手を加えるということは、リスクを負うことになるのです。

下表は今回使用した部品です。
項目数量入手
六角穴付ボルト
(M3x30)
3別途購入
ポリアセ ブッシュ
(M3)
3

自転車ライト(CATEYE HL-EL340)のロック

投稿 土 11/ 2 16:04:29 2013 | デジタル工作機 | hotall

前回の投稿で、自転車ライトの修理を断念したので、新しく買い直すことにしました。




今回も同じメーカーのライトです。
新製品は良いものです。色々と改善されています。
以前のライトより明るく、電池も4本から2本になっています。
ブラケットも従来のものが使えたので、そのまま差替えました。

私は、ライトの付け外しは面倒なのでしません。
ところが、このライトは付け外しを前提に設計されているので、簡単に外せるようになっています。
インターネットでは駐輪場でよく盗まれると報告がされているので、簡単に外せないようにすることにしました。



このライトは取り付け部分のボタンを押して取り外します。
今回、このボタンを押せないようにストッパーを噛ませることにしました。

こんな時、3Dプリンタは便利です。パソコンを使って数分で設計して、出力するだけです。力仕事は必要ありません。



今回もAutodesk 123D Designで設計しました。




3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)で出力します。
さすがに0.5mm単位の造形は設計通りにはいかないようです。
それでも、何とか使えそうです。




無事に取り付けることができました。
このストッパーを外さない限り、ボタンが押せなくなりました。


下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
ストッパー1ダウンロード

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のY軸のバックラッシュとガタ

投稿 月 10/ 7 11:47:46 2013 | デジタル工作機 | hotall

前回の投稿では、「Y軸の精度が上がらない」問題は解決しませんでした。
今回は、より詳細に調べ、解決したいと思います。





問題の発端となったのは、フィラメントリールスタンドのディスクを出力した際に、サイズを検査した時のことです。
ディスクは正円にも係わらず、X軸方向とY軸方向でサイズが異なっていることに気づきました。
更に調べると、X軸方向は正しいのですが、Y軸方向が設定より短くなっているのです。




Y軸のスケール調整をやり直しても改善しません。




これは、おかしなことだと、更に測定方法を色々変えてみると、進行方向を変えた直後にずれが生じていることが分かりました。
ずれは移動距離に係わらず0.5mm短くなるように発生します。

この現象から、構造上のガタか、バックラッシュと呼ばれるギアなどの遊びによるものと考えられます。

考えられる原因を挙げてみます。
  • ネジの緩みによる部品接合部のガタ
  • ベルトの緩み
  • ベルトの伸び
  • ベルトとプーリーの遊び
原因を特定する為に、まず、Y軸モーターのプーリーを指で押さえ、ベッドを動かしてみます。これで、容易に動くのであれば、どの箇所まで動いているのか調べる事で原因を特定できるはずです。
ところが、ベッドはほとんど動かないのです。

見たところ、少なくともネジの緩みなどの問題ではなさそうなので、プーリーかベルトの問題であると仮定し、これらを個別に調べてみることにしました。



ベルトを外し、プーリーの状態を見ようと少し引っ張ってみると、はめるときは結構苦労したのに、簡単に外れてしまいました。
プーリーも3Dプリンタで作成されているので、穴には層状の凹凸があったのですが、これが無くなり、明らかに摩耗しています。
結局、プーリーとモーターの接合部のガタが今回の原因だったのです。
Y軸駆動系は厚いアルミ板やヒーターなど重い部品で構成されているので、ベルトやプーリーにはX軸駆動系よりはるかに負担がかかっています。
樹脂製のプーリーには、この負荷が耐えられないようです。




そこで、市販の金属製のプーリーを探すことにしました。
ところが、ぴったりとしたサイズのものが見つかりません。
なんとか内径以外は適合するプーリーは見つかったので、仕方なく、これを購入して加工することにしました。

大手国産メーカー 椿本チエインの製品です。歯も台形で、バックラッシュも少なそうです。
しかし内径は4mmです。




プーリーを加工するのに、手元にはハンドドリルしかありません。
プーリーを万力で固定し、ハンドドリルで穴を5mmに広げてみました。

広げることはできたのですが、手作業での軸合わせは難しく、案の定、中心がずれてしまいました。
幸い、歯の中央部分は中心だったようで、ベルトの端は多少揺れますが、中央の揺れはほとんどなく、何とか使えそうです。

やはり精密に加工するためには、ボール盤など、それなりの道具が必要ですね。




プーリーの穴周りに出っ張りがあり、これがモーターに接触するので、やすりで少し削りました。




モーターに組み付けました。
今回はねじ止めできるので、ガタも完全になくすことができます。

再度、Y軸スパンの測定と調整を行い、進行方向によらず、ずれはなくなったことを確認しました。

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のY軸ベルトのテンションとフレーム補強

投稿 金 10/ 4 17:22:20 2013 | デジタル工作機 | hotall

最近、私も年を取る毎にやる気が起きにくくなってきました。

やる気が起きる状態をテンションが上がると云いますが、この言葉、調べてみると和製英語だそうです。
本来、tensionは緊張を意味しますが、どうしてこれがやる気というプラスの意味に変わってしまったのかが不思議です。
「生活に張りがある」の言い方があるように、日本人は昔から緊張状態を好むのかもかもしれません。
しかし、最近ではゆるキャラが流行るなど、傾向が変わってきているようですね。




3Dプリンタが完成してから、何度調整してもY軸方向の精度が良くなりません。

これは駆動ベルトが緩んでいるのが原因ではないかと考え、張りを強くしてみました。
結果は多少精度が改善したものの、X軸に比べて精度は悪く、問題は解決はしませんでした。

更に困った事に、この対策過程で、ベルトの張りを強くするとフレームが容易にたわむ事が判明しました。
フレームの歪みは色んな箇所の精度に影響するので良くありません。この問題も解決する必要があります。

RepRapProのフレームは寸切りボルト(長ネジ)で構成されています。
この細長い棒は、押し引きの力には強いのですが、曲げの方向には弱いのです。
Y軸の駆動ベルトはボルトの中間部分に取り付けてあるため、ベルトの張力は、このボルトの曲げ方向にかかり、ボルトを歪めてしまうのです。
そこで、ベルトの張力で歪まないようにフレームを補強することにしました。



補強策として、ベルトの張力を支えるように前後のボルトを新たなボルトで固定します。
折角、組立・調整したフレームを分解したくはないので、ボルトを入れる個所はU字にして、ベルトの張力の方向だけを支える仕組みとしました。



ボルトを繋ぐ部品をAutodesk 123D Designで設計します。




3Dプリンタで出力します。




今回使用する部品です。
樹脂部品以外に市販のボルト、ナット、ワッシャを使用します。




ベルトのすぐ横に組み付けます。

この補強により、ベルトの張りを強くしてもフレームが歪まなくなりました。

ベルト張力による歪みがどれだけ影響しているかわかりませんが、少なくとも不安要素をなくすことができました。

下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
ボルト固定具2ダウンロード
寸切りボルト
(M6x250mm)
1市販品を切断
ナット(M6)4市販品
ワッシャ(M6)4

今回は本来の問題を解決することができませんでしたが、完全解決に向けてテンションを上げたいと思います。

コンパクトアンプ(BOSE 1705II)の縦置きスタンドの製作

投稿 月 9/30 10:44:24 2013 | デジタル工作機 | hotall

ユーザーは時として設計者の意図と異なる使い方をします。
設計者には製品に対する自身の理念があり、設計者が思い描いた使い方で最も美しく、機能的になるように設計しているはずです。
しかしユーザーにも製品に対する要求があり、それに沿った使い方をするのは自然な行為です。
もし、ユーザーの要求と製品の特性が合致しなければ、ユーザーは不満を持ちながら使い続けるか、新たに買い直すことになります。
なぜなら、ユーザーは製品の仕様を変更する術を持たないからです。

私が3Dプリンタを手に入れたかった理由の一つが、従来は困難だった複雑な造形も、パソコンに入力さえすれば、特別な製造技術なしに作成できると考えたからです。

製品は時として、その適用範囲を広げるために、色んなアタッチメントを同梱させます。
その多くは能動的な機構を持たない構造上のアタッチメントで、樹脂で作られています。
3Dプリンタはユーザーが自身の手でアタッチメントを作り、製品の適用範囲を広げることを可能にします。




私はパソコンのオーディオ出力として、昔、車載していたBoseの小型スピーカーをBoseの小型アンプで鳴らしています。
このアンプは小型スピーカーに最適化されたイコライザーが入っており、また形も小さいので、デスクトップに置くに適しています。ところが、その形状は、スピーカーに直接取り付けるか、据え置きにする場合でも横置きにしかできないものとなっています。

買った当初、アンプは本と並べて置くことを想定していたのですが、縦置きにできないことが分かり、仕方なく見えない場所に横置きしていました。

今回、3Dプリンタが手に入ったので、この問題を解決すべく、縦置きを可能にするアタッチメントを作成しました。






今回もAutodesk 123D Designを使って設計しました。

今回もよく落ちました。




3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)で出力します。

コンピュータに入力した形状が実際に出来上がる様は、何度見ても楽しいです。




作成したスタンドを取り付けた様子です。
フィラメントが白しかなかったので、これを使いましたが、黒の方が一体感があって良かったかもしれません。


下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
スタンド1ダウンロード
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