「サポート材あり」での出力

投稿 火 9/30 16:56:53 2014 | デジタル工作機 | hotall

熱溶解積層法プリンタは溶かした材料を下から順に重ねていく方式です。
したがって、空中で浮遊している物はもちろん、飛び出した部分は溶けた材料では支えきれず崩れてしまいます。

これを支えるために、作成時、一時的に付加するのがサポート材です。
サポート材は出力した後、手作業で製品から取り除きます。

サポート材の出力は簡単です。スライサーの設定で、サポート材の出力をチェックするだけで、自動的に付加されます。

一方、サポート材の除去は面倒です。
刃物などを使って手作業で行わなければなりません。
複数のノズルを持つ3Dプリンタであれば、サポート材を除去しやすい材料で出力できるのですが、私のプリンタは単一ノズルなので造形物と同じ材料で出力されます。

私はこれまで、この除去作業を嫌って、サポート材を使わないように設計していました。
ところが、複雑な造形になるほど、サポート材の使用を避けて通れなくなります。
今回、イヤホンホルダを作成するにあたり、サポート材を初めて使ってみることにしました。






これが出力結果です。
横穴やせり出した部分にサポート材が付いています。
これを手作業で取り除いていきます。




まずは穴の外側に付着したサポート材を取り除きます。
刃が薄いニッパーで切り取ります。
これは、比較的簡単に取り除けます。




外側のサポート材を取り除くと穴の中にサポート材が詰まっています。




カッターで取り除いてみます。
浅い部分はなんとか取り除けますが、奥の入り組んだところは刃物が届きません。
しかも結構固く、力を入れすぎると製品に傷をつけてしまいます。

もう少し大きな穴であるコの字の部分のサポート材もカッターで取り除いてみましたが、状況は変わりません。




カッターでは作業が進まないので、マイナスドライバーで剥がすことにしました。
ドライバーをひねったり、てこの応用で剥ぎ取ったりします。
かなり強引な方法で、製品には負荷がかかってしまいますが、取り去るスピードはアップします。




薄い部分にはダメージが残りましたが、コの字部分だけは作業を終えることがでしました。

マイナスドライバーで大体のサポート材を取り除いた後、刃物で細かい部分を取り除くのが、一番効率が良いようです。

ノズル径やフィラメントの硬度により、もっと楽に除去できるのかもしれませんが、少なくとも私の環境では除去作業は大変で、製品へのダメージも起きてしまいます。

では、サポート材を使用しないとどうなるのでしょうか。
次回はサポート材を使わないで出力してみます。

フィラメント(ABS)の変色

投稿 土 9/27 11:24:05 2014 | デジタル工作機 | hotall




コンタクトレンズ洗浄液(メニコン プロージェント)のホルダーを作るため、久々に3Dプリンタを動かしました。
ところが、白のフィラメントを使ったのにも係わらず、造形物がクリーム色に変色しています。
フィラメント自体の色は真白なのに出力物だけが変色しているのです。

不思議なのは、出力した最初の部分は変色していません。
素人なりに原因を探ってみることにしました。



これまでは同じフィラメントを使っても変色しなかったので、フィラメントの性質にに何らかの劣化が生じたと考えられます。
プラスチックの劣化について調べてみると、酸、アルカリ、水、光、温度が影響するようです。

出力した最初の部分は、エクストルーダのパイプに入っていたので、この部分だけが上記の影響を受けなかったと考えられます。

まず、通気の良い室内に置いていたので、強い酸やアルカリに触れることはありません。
出力を続けていても変色の度合が変わらないことを見ると、光が届きにくいリールの何層も下の部分でも起きているので、光の影響でもないようです。
温度についても、室温ですので特に高温ではありません。
消去法で考えると水になります。

プラスチックは吸湿性があるので、フィラメントが湿ってしまったようです。
湿っても、出力前の状態では見た目は変わりません。
ところが、ホットエンドで溶かされるとき、フィラメントに含まれている水分が蒸気となり加水分解が一気に進んだと推測されます。

では、湿ったフィラメントを元に戻す方法はないのでしょうか。



そこで、家庭用除湿剤を使って除湿してみることににしました。
除湿剤はドライペットです。
ビニール袋にフィラメントを除湿剤を入れ、丸一日置いてみました。




出力してみましたが、効果はほとんど見られません。

他にも方法があるか調べるつもりですが、取り敢えずこれ以上湿らないように除湿剤入りの袋で保管することとし、クリーム色のフィラメントとして使用することにしました。

[追記]



フィラメントを除湿剤入りの袋で保存するようになり、1か月ほど経ちました。
出力してみると、フィラメントの変色は完全にはなくなりませんでしたが、目に見えて改善されました。
写真では分かり辛いですが、右側が除湿期間が長い方です。
時間をかければ、ある程度は家庭用除湿剤で回復できるるようです。


コンタクトレンズ洗浄液(メニコン プロージェント)のホルダーの3Dデータ(STLファイル)をアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
ホルダー1ダウンロード

イヤホン(BOSE IE2)ホルダの作成

投稿 金 9/26 12:03:30 2014 | デジタル工作機 | hotall

半年ほど前に携帯電話の通話スピーカーが故障してしまいました。
自分で修理することを考えたのですが、デジカメの修理で失敗した苦い経験があり、高密度の電子機器の修理に腰が引けてしまいます。

ただ、イヤホンを繋ぐと通話はできます。
もともと通話スピーカーを使うとエコーキャンセルで会話が途切れるのが嫌いで、イヤホンを使うことが多く、このまま修理せずイヤホンで通話するようになりました。




しばらくイヤホンは写真のように携帯に巻いていましたが、このイヤホンコードの被覆はゴム製で強度的に弱く、イヤホン本体もぶらぶらしている状態なので、このままでは断線の原因になります。

そこで、イヤホンホルダーを作成することにしました。
設計要件は次の通りです。
  • イヤホンを格納した状態で携帯につないでおけること。
  • コードが邪魔にならないように束ねられること。
  • イヤホン本体がぶらぶらしないように固定できること。
  • コードに無理な負荷がかからないこと。




まず最初に作ったのはイヤホン本体とプラグを差し込み、コードは束ねて挟み込むタイプです。
本体とプラグ付近のコードは断線し易いので、曲がらないように注意しました。




携帯に装着してみます。
あまりに巨大で、しかも重いので、これでは使えません。




次に小型、軽量化しました。

ところがイヤホン本体をはめるとき、イヤピースが邪魔で苦労します。




また、コード束ねてはめるのに手間がかかってしまいます。




最終的な形です。

イヤホン本体は裏からはめるようにしました。
また、コードはホルダに巻き付ける方式にしました。

顔のように見えて少し面白いです。




裏からの様子です。
コードはほどけないように付属のクリップで止めておきます。




携帯にはめてみました。

取り敢えず使えるレベルになりました。
まだ改善の余地がありそうなので、使っていく中で改良を続けたいと思います。

3Dデータ(STLファイル)をアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
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イヤホンホルダ1ダウンロード

3D年賀状

投稿 火 1/14 13:03:03 2014 | デジタル工作機 | hotall

年も押し迫ってくると、頭を悩ませるイベントの一つに年賀状作りがあります。
私は字が下手なこともあり、筆不精なので、この毎年の行事はあまり好きではありません。

以前は下手な版画を作って刷ったりしましたりしましたが、最近ではプリンタ印刷が多くなりました。
毎年、この変わり映えのしない作業にモチベーションを上げるのに苦労しています。

しかし今年は3Dプリンタを製作したので、これを何とか使って、例年とは趣向を変えた年賀状作りを試してみることにしました。

例年通り、妻との共同作業です。
まずは設計から始めます。あれやこれやと話し合いながら行います。

年賀状としての制約に、定型郵便物でなければなりません。
つまり、立体物などを直接送ることはできません。
そこで、プラモデルのように平面部品を組み立てる方式とし、部品を定型に収まる紙のパッケージに入れることにしました。




来年の干支は馬なので、組み立てて馬の形になるもの、しかも少しは役に立つものとして、小物入れを考えてみました。

部品と部品の接合には接着剤などを使わず、ほぞ組みのように差し込み、抜けないようにスライドして固定する方式としました。







Autodesk 123D Designで設計しました。




3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)で出力します。




出力している様子です。




やすりでバリ取りをします。




細かい部分は妻のリューターを借りて行いました。




全ての部品ができました。




組み立ててみます。
スライドすることでそれぞれの部品が噛みあい、結構丈夫になりました。




パッケージを作成します。
厚手の紙に(2D)プリンタで印刷します。

表面にはパッケージの外側となる宛名とメッセージを、裏面にはパッケージの内側となる作り方と部品配置を印刷します。




印刷した用紙を切り取り、折り曲げます。




部品を貼りつける場所と用紙の貼りしろに、剥がせるスプレーのりを塗布します。
部品を貼り付けます。




パッケージを組み立てます。




出来上がりました。
一見すると厚手の年賀状の様に見えます。
裏面から剥がすと部品が現れる仕組みです。




送られた人にとって、正月の暇つぶしには良いかもしれませんね。

下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
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馬部品A,B,C,D,E5ダウンロード
パッケージ印刷1ダウンロード

出来上がりには結構満足しましたが、作業量が多く、妻を巻き込み徹夜作業となってしまいました。それでも、例年年賀状を送る人のほんの一部の人にしか送ることができませんでした。
結局二人ともへとへとになったので、来年はやらないような気がします。(^_^;)

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)の冷却ファンの破損と静音ファン換装

投稿 月 11/11 11:29:05 2013 | デジタル工作機 | hotall




前回、ヒーテッドベッドのガタを改善中に冷却ファンを破損しましたが、取り敢えず瞬間接着剤で修理してみました。

しばらくは、元通りに回るようになりましたが、そのうち接着した羽根が取れてしまいました。

やはり、羽根は薄く接着面積が小さいので風圧には耐えられないようです。ファンは取り替えなければなりません。




この3Dプリンタのクーリングファンの動作音は結構うるさいです。
4000rpm/12Vのファンを19vで駆動しているので、当然とも言えます。
キットの標準品として選定されたものなので、疑問を持たずに使っていましたが、静かな部屋で動作させる中、この騒音を何とかできないかと考えるようになりました。

そもそも、ホットエンドのファンは何のためにあるのかを考えると、ひとつは装置の保護、もう一つはフィラメントの融解を制御するためであると推測されます。

まず、ホットエンドはノズルや冷却ブロック、ネジ類を除けば、ほとんどが樹脂でできているので、ヒーター温度をそのまま樹脂部品に伝達してしまうと破損の原因になります。したがって加熱が必要な箇所以外は冷却しなければなりません。

他方、フィラメントの出力はフィラメント自身の押し出しにより行っているので、ノズル内の融解室より前で液化するとフィラメントを出口方向に押し出せなくなり、更には入口の方に逆流する恐れすらあります。したがってノズル内の加熱を先端付近に局所化し、フィラメントが固体のまま、融解室に送り込まれるようにしなければなりません。先の理由と異なり、はたして、こちらの理由は、私の勝手な推測の域を超えず、真偽のほどはわかりませんが。

選定者の意向に従い、同一スペックのファンにすることが最もリスクの少ない対処方法であことは確かです。
しかし、それでは面白くありませんので、ファンの取替を機に、静音ファンを試してオリジナルのファンと同等の役割を果たせるか確かめることにしました。





今回試すのはアイネックスのCFZ-4010Lです。回転数は3300rpm/12Vです。元のファンの8割程度の速度です。実際には19Vで駆動するので、スペックの回転数はより高くなり、静音仕様と云えども、多少は動作音も大きくなるでしょうが、元のファンよりは静かになるはずです。
しかし、風量が落ちることはスペックからも明らかです。
そこで、双方で温度を測定し冷却性能がどれだけ落ちるのか比較することにしました。




測定箇所は2か所にしました。

まず、冷却ブロック(チューブとノズルの連結ブロック)背面中央です。
この場所は冷却ブロックの後方部分で最もノズルに近い部分です。樹脂部品には更に熱源から遠い上部からスプリング経由で熱が伝わるので、この箇所の測定温度が樹脂の融点より低ければ、樹脂部品破損の危険性が十分低いと云えます。




次に、ノズル上のヒーターブロックと冷却ブロックの中間点です。

ここは冷却部分の手前の温度となり、低いほど、加熱部位の局所化がなされていると云えます。

方針が決まったところで、ファンの交換作業を行います。



このファンには回転検出パルスセンサがついていますが、これは使用しないのでコードをカットします。




ファンの交換が完了しました。

ノズルの位置が変わったかもしれませんので、Z軸リミットスイッチの位置スライサのZ軸オフセット値を再調整します。

オリジナルファンとと今回ファンの冷却性能の比較です。
ヒーターを200度に設定し、それぞれのファンで温度を測定しました。



まず、冷却ブロックの温度です。
オリジナルファンが55度、静音ファンが56度、若干上がったようですが、ほとんど差異はありません。




次にノズル上のヒーターブロックと冷却ブロックの中間点の温度です。
オリジナルファンが126度、静音ファンが130度とこれも若干上がりましたが、問題となるような温度差とは思えません。

今回のファンの換装で、体感的に風量は結構落ちたように感じましたが、温度の測定結果を見る限り、風量の差ほど冷却性能に変化がありませんでした。
この結果に安心しましたが、逆にファンの能力が冷却に貢献していないことに疑問が残ります。

そこで放熱板を触って熱がどの様に伝わっているのか調べてみました。
すると、熱いのはノズル付近の一部だけで、ほとんどの部分は熱を持っていません。

つまり、ファンの風が当たっている放熱板のほとんどは熱を伝えておらず、風が奪っている熱量は少ないとわかります。



その原因の一つは、放熱板の取り付け位置です。冷却ブロックは放熱板の最も下の位置に取り付けられており、しかも熱源は冷却ブロックの最も下から熱を伝えます。
本来、放熱板の中央に熱源があるのが効率的なのが、放熱板の最も下に熱源があるために風による放熱効果が生かされていません。
実際、放熱板にある複数のフィンのうち下の2枚ぐらいしか暖かくなっておらず、しかも最も下のフィンの外側には風が当たりません。

もう一つの原因は冷却ブロックの厚みです。
冷却ブロックはアルミの角柱です。熱伝導が良いといわれるアルミですが、その厚みの為に、放熱板まで熱が伝わるのに時間を要してしまいます。したがって放熱板をガンガン冷やしても伝わる熱の速度が追い付かないのです。

測定結果に疑問が残りつつもテスト出力してみました。
動作音はオリジナルに比べ劇的に静かです。
出力結果も特に問題はなさそうなので、このまま使い続けることにしました。
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