3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のヒーテッドベッドの接触不良とCPU破損

投稿 火 7/ 5 16:04:26 2016 | デジタル工作機 | hotall

3Dプリンタが出力するのを見るのは楽しいものです。X、Y、Z軸の駆動装置がダイナミックに動く様子は、まるで意思のある生き物のように見えます。
Huxleyの場合、特にX,Y軸方向にベッドが激しく動くので、ベッドに繋がっているケーブルが断線するのではないかと心配になったりします。
案の定、先日、ベッドの温度が計測できなくなるようになりました。





ケーブルコネクタ辺りを触ると、現象が出たり出なかったりするので、このコネクタの接触不良のようです。以前も接触不良があり、補修した場所です。

良く見ると、ランドが浮き上がっています。
この基盤は、片面基板です。ランドはスルホールではないので、力がかかると剥がれ易くなっています。そのうえ、このコネクタはテーブルの移動とともに頻繁に力がかかるので、接触不良が起きるのは必然的と言えます。

まず、コネクタを外します。

元の端子は、直立端子で、端子自身が比較的長く、てこの原理で、接続部分には大きな力が加わります。
今回、この端子をL字型して、高さを抑え、加わる力を軽減します。

L字の長いほうを基板に差します。

基板の表側に出たピンをパターンに沿って折り曲げます。これにより、コネクタが抜けにくくなるのと同時にパターンとの接触面積を広げることができます。

はんだ付けします。
ランドのいくつかは既に剥がれてしまっているので、パターンのレジストを剥がし、そこにはんだ付けしました。

本来ならケーブルを接続して修理は完了のはずでした。

しかし、次の瞬間"バチッ"と火花が散りました。
「あ、しまった。」

ケーブルの断線をチェックした時に、装置の電源を入れたことを忘れ、通電したまま作業をしていたのです。
「やってしまったか。」

ソフトを立ち上げ、動作を確認します。
通信はできますが、ベッドとホットエンドの温度が異常な値を示します。
アナログ入力の故障です。電源ラインとショートさせてしまったようです。

この制御ボードのアナログ入力はCPUに直結されています。
CPUを見ると、見事にパッケージに穴が開いていました。

新たな問題発生です。

[追記]
問題の対策としてCPUの交換をすることにしました。

3D年賀状(2016)

投稿 月 1/ 4 17:10:34 2016 | デジタル工作機 | hotall

不思議なことに、過去に苦労したことは、その行為はよく覚えているですが、その苦労の程度は思い出せません。したがって、それが成功体験であれば、楽観的な思考のもと、また同じことを繰り返してしまうのです。

かつて、3Dプリンタを製作した年に、その応用として3D年賀状を試しに作りました。しかしながら、完成はしたものの、夫婦で徹夜作業となり、苦労した経験がありました。

あれから2年が経過し、今年も年賀状の季節となり、そろそろ準備をしなければと思案していると、あの3D年賀状の記憶が蘇ってきました。

そうだ、また作ろう。前回の経験を生かせば、今度は簡単に作れるはずだ。

こうして、この安易な決断が同じ轍を踏むことになるのです。




前回は小物入れを作りました。
今年も同じものでは面白みが無いので、何か別のものをと悩んでいました。

机に転がっているスマホを眺めながら、買い替える度に大きくなるこの装置の置き場がないことに気づきました。

スマホスタンドを作ろう。







来年は申年なので、造形のどこかに猿の形を取り入れようと思いました。
まずは頭に浮かんだイメージをラフなデッサンに書き出します。

猿がスマホを支えているイメージです。




デッサンを元に3Dのモデリングを行います。

はがきサイズに梱包するので、前回と同様に平板の部品を組み立てるものとします。

今回も123D Designを使いました。




出力します。

何とか1体分の部品をベッドに収めることができました。




組み立ててみました。

猿が支えているように見えます。
今話題の○○丸のポーズにも見えます。




早速、スマホを乗せてみます。

5インチのものは縦にも置けますが、6インチのものは横に置きます。
充電する時は、小さなコネクタのケーブルなら繋いだ状態で縦に置けます。そうでない場合は横に置きます。




これはイーゼルのようなものですので、サイズさえ合えば何でも置けます。

例えば小さなメモ帳。




メッセージカードなど色々置けます。




さて、どんどん出力し、人数分だけ作成します。
とは言っても、1セット出力するのに40分かかります。1回ずつ手でセッティングしなければならないので、寝ている間に出力するという訳にはいきません。
結局、出力するだけで丸二日かかりました。




そして、梱包です。

前回と同様に厚紙でパッケージを作ります。
内側に組立て図と配置図を、外側に宛名と絵を印刷し、切り取ります。
折り目を付けて、部品を配置し、糊で封をします。




出来上がりです。

一見すると表が宛名、裏が絵の厚みのある年賀状に見えます。

下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
猿部品4ダウンロード
パッケージ印刷1ダウンロード

今回も結構な作業時間を要してしまいました。
体力的な理由で徹夜はしませんでしたが、その代わりにすべてが終わったのは大晦日でした。
そしてこう思うのです。

「次回はやらないな。」

リーラペンダントライト(HED1067E/Panasonic)のリモコン化と取付け

投稿 土 3/28 18:04:16 2015 | デジタル工作機 | hotall

色々悩んで買ったものが、実は仕様が合わず使えなかったということがたまにあります。
こんな時は、結構落ち込みますよね。

先日、自宅の台所のレンジ周りが薄暗く、ペンダントライトを付けることを検討していました。




天井を見れば丁度良い位置にコンセントがついています。
後は、このコンセントに合うペンダントライトを探すだけです。

最近は、電気店も縮小の傾向にあり、ライトの品揃えも良くありません。
ますます、ネットで買い物をするようになってしまいます。

ネットで検索すると、色々なペンダントライトがヒットします。
今回は、レンジでの調理の時に上から照らす以外に、サイドテーブルで作業する時に手元を照らせるように、位置が下げられるリール式のライトが欲しいと思っていました。

目的に合う商品がいくつか見つかり、中でもコンパクトで使い勝手のよさそうな、PanasonicのHED1067Eを購入することにしました。

ところがこのライトは、階段などに使用することを想定しているためか、スイッチが付いていません。
実は天井のコンセントにはON/OFFができるスイッチが壁についていないのです。

これでは使えないなあと、引き続きネットを検索していると、シーリングライト用のリモコンスイッチがあることが分かりました。
これなら、リモコンを壁などに付ければ、手元でON/OFFできます。
これで問題は解決したと、早速、ライトとリモコンを注文しました。
数日後、商品が届きました。




これがペンダントライトです。
PanasonicのHED1067Eです。
上下できるようにリールの箱が付いています。




こちらがリモコンです。
オーム電機のOCR-04です。
上面にライトを繋ぐコンセント、下面に天井のコンセントに繋ぐプラグがあります。




さて取り付けようと、ライトの取り付けマニュアルと見て愕然としました。
このライトは、矩形の出っ張ったコンセントしか対応していないのです。天井のコンセントとの間に設置するリモコン本体は、出っ張りのないコンセントです。
しかも、ライトの台座は直接天井にねじ止めするようになっています。


色々と考えを巡らしながら、全く仕様が合わないこのライトは、オークションで転売するしかないと思い始めていました。

しかし、我が家には万能DIYツールの3Dプリンタがあります。
これで何とかできないかと考えました。

ライトの台座と、リモコン本体を固定できる方法があれば、リモコンからコンセントを外して、ライトの中で結線できるはずです。
しかしながら、ライトの台座とリモコン本体は大きさも形状も全く異なります。

そこで、3Dプリンタで両者を結合するアタッチメントを作成することにしました。

この文書は個人的なものであり、読者による改造を推奨するものではなく、内容について一切の責任を負いかねます。
ユーザーによる改造はメーカーの保証・修理が受けられなくなります。




まず、ライトの台座とリモコン本体のサイズを計測します。
両社とも形状が複雑なので、紙に形状を写して、スキャナで読み込むことにしました。



紙の上にリモコン本体を載せ、ペンで縁を写し取ります。




ライトの台座も同様に写し取ります。




スキャナで読み込みます。




draw系ソフトでスキャナで取り込んだ画像を読み込みます。今回はInkScapeを使用しました。




この画像にに合わせて、曲線としてトレースします。




トレースした曲線をSVG形式でファイルに落とします。




これを123D Designでインポートします。
インポートしたSVGデータは実際とスケールが異なるので、代表的な箇所の長さを計測し、形状データの拡大/縮小を行います。




インポートした形状を元に、アタッチメントを設計します。
アタッチメントとライトの台座は、ネジで縦方向に固定します。アタッチメントにはネジ穴を設けます。
アタッチメントとリモコン本体もネジで横方向に固定します。このネジ穴も設けます。
更に台座とリモコン本体もネジで直接固定します。




設計が終われば、これを出力します。




まず、リモコン本体を分解して中身を取り出します。




リモコン本体とアタッチメントを合わせた状態でライトの台座に組み付けます。ネジで上下方向に固定します。
次に台座とリモコン本体をねじ止めする為に、リモコン本体に穴を開けます。




台座とリモコン本体をネジで固定します。




アタッチメントとリモコン本体をねじ止めする為の穴をリモコン本体に開けます。




アタッチメントとリモコン本体をねじ止めします。




リモコン本体の中身を元通りに組み付けます。
ところが、ネジと基板が干渉してしまいます。




本来ならアタッチメントのネジの位置を変更して出力し直すべきですが、基板上の干渉する場所には回路がないので、今回は基板を削ることで対応しました。




台座の穴からリモコンのコンセントを引き出します。




リモコン本体の蓋をします。




コンセントの端子がむき出しになっているので、安全の為、ビニールテープで絶縁します。




ライトのプラグをはめます。




台座をライトに取り付けます。




これで出来上がりました。




赤外線受光部位置を確認して天井に取り付けます。




こんな感じになりました。
ライトとリモコン本体の形状に合わせて設計したため、一体感のある出来上がりに満足できる結果となりました。
3Dプリンタがあれば、こんな対処もできるものだと、便利さを再認識しました。


3Dデータ(STLファイル)をアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
アタッチメント1ダウンロード

ヒーテッドベッドからの剥離

投稿 木 1/ 8 22:05:24 2015 | デジタル工作機 | hotall

年末、久々に比較的大きなものを3Dプリンタで出力してみました。




すると、端がベッドから剥離し、底が湾曲してしまいます。

ベッドにカプトンテープを貼って以来、これまで接地面積が大きいものはほとんど剥離することはありませんでした。この突然の現象を不思議に思い、原因を探ってみることにしました。





まず、思い付いたのはカプトンテープの劣化です。
しかし、目視する限り、目立った劣化はありません。




次に気になったのはベッドの温度です。
なぜなら出力した日は寒い日にもかかわらず、暖房を入れず、これほど室温が低い条件で出力したのは初めてだったからです。

設定温度の変更はしていませんので、正しく温度制御されている限り、いくら室温が変化してもベッドの温度が変わることはないはずです。
しかし、これまで実際にベッドの温度を測定したことは無かったので、念の為、測定してみることにしました。




ベッドの温度を115℃に設定し、暖房を入れ、室温20℃の状態でベッド上の5x5のポイントについて温度を測定します。




想定に反し、ベッドの温度は、設定温度より平均で24℃も低く、しかもばらつきが大きく、最大値と最低値で15℃も開きがあります。

この原因について考えてみます。
まず、設定温度との差異は、温度センサの測定位置によるものと思われます。温度センサであるサーミスタは、ベッドのアルミ板とヒーターの間にあります。
この箇所が指定温度を維持しても、3mmもあるアルミ板の上部では、熱が伝わる間に、当然、冷やされてしまいます。

次に温度のばらつきですが、これはヒーターの加熱能力が箇所によりむらがあると考えられます。広い範囲を均一に加熱するのは難しいのでしょう。



さて、これが室温によりどう変化するのか調べてみます。

暖房を切り、窓を開けて外気を入れて室温を下げます。

室温は12℃まで下がりました。この状態で、先ほどと同様にベッドの温度を測定します。




平均で設定値より27℃ほど低い結果となりました。これは先ほどの室温20℃に比べ2.5℃程低い値です。やはり、アルミ板の3mmの厚みを伝わる間に、より低い室温で冷やさているのです。

更にばらつきの方は、最大値ー最低値間が22℃と室温20℃の時より更に開きが大きくなっています。




室温20℃から12℃の温度差と測定温度との関係をグラフにすると、状況がはっきりします。

加熱能力が低い箇所ほど室温による影響が大きいのです。

つまり、室温が低いと、ベッドの加熱能力が低い箇所の温度低下が顕著に現れ、材料を十分温めることができず、収縮と粘性低下により剥離を起こしてしまうのです。

これを根本的に解決するには、センサの位置をベッド表面に移動し、かつ、ヒーターのばらつきを抑えるしかありません。
しかし、これは大事になってしまうので、避けたいところです。

そこで、当面は室温を下げすぎないように空調で調整し、ベッドの温度は室温で冷却されることを見越して、室温に応じ高めに設定することにしました。

上記散布図の回帰直線から12℃の-2σ点が20℃で約10℃上がった事と、これまで正常に印刷していた時の室温を25℃と仮定し、出力する時点の室温から次の式でベッドの温度を調整することにしました。

 ベッド温度 = 115℃ + (25℃ ー 室温) x 1.25

例えば室温12℃の場合、
ベッド温度 = 115℃ + (25℃ ー 12℃) x 1.25 ≒ 131℃
となります。

「サポート材なし」での出力

投稿 水 10/ 1 10:28:10 2014 | デジタル工作機 | hotall

前回、「サポート材あり」での出力を試してみました。
その結果、サポート材を取り除くには大変な手間と時間が掛かることが分かりました。

それでは横穴のような本来サポート材を付加しなければならない場合に、サポート材を使わないで出力するとどのようになるのでしょうか。
試してみました。






コの字の部分は、どう考えても無理なので、手動で簡単なサポート材を入れて、その他の部分をサポート材を入れずに出力してみました。

予想に反し、一見した限りでは、不具合はなさそうです。




X,Y平面上で1方向だけの幅の狭い横穴は問題ありません。




幅の広い横穴では剥落が見られましたが、これは上部が傾斜している個所だけでした。




X,Y平面上で貫通している穴については一部に剥がれて垂れる部分がありました。

これらの観察から分かることを整理してみると。
天井傾斜が45度ぐらいのせり出しでは剥離は起きない。



天井傾斜が大きいほど、フィラメントの重心が下の層に大きくかかるので、下の層で支えることができます。

それより傾斜が緩やかでも幅が狭ければ剥落は起きない。



穴の天井を形成する箇所に置いて、空中を渡るフィラメントが長ければ、自重で垂れ下がり周辺のフィラメントから剥離してしまいます。
逆に短ければ、自重に耐えることができます。

接地している2点を繋ぐの方向に対し平行であれば、剥落は起き難い。



接地している2点を繋ぐの方向に対し平行であれば、穴の天井を形成する層は2つの接地点の上空を渡る面として形成されるので、フィラメントが上空を渡る1本のロープのように張られるようになり、剥落しにくくなります。

逆に平行でなけれは、穴のの天井を形成する層は傾いている方向に面の端が少しずつずれる形で形成されるので、各層のフィラメントが複数のロープを貼り合わせたように上空を渡るようになります。(左図)
したがって、上の層と下の層の結合点において、自重やノズルの圧力により剥がれる方向に力が掛かってしまいます。
こうなると結合している下の層のフィラメントが冷えて硬化する前に、上の層からの力がかかると支えきれなくなります。


剥離を防ぐ為には上記の設計上の注意点の他に、3Dプリンタの設定に関して以下の注意が必要です。
積層ピッチを小さくしすぎない
熱溶解積層法プリンタでは下の層に上の層の材料を接着することで造形します。
積層ピッチを小さくすると、層の厚さを薄くするために、より強い力でノズルを下の層に押し付けます。

空中を渡る層を形成する場合、天井面の最下層はそれを支える層が存在しないため、その上の層を押し付けるとき、圧力が大きすぎると下の層ごと周辺の部分から剥離させてしまいます。

ノズル温度を高くしすぎない
横穴の天井のように空中を渡る層を形成する場合、天井面の最下層はそれを支える層が存在しないため、出力される材料は自重で崩落しないぐらいの強度とノズル速度に耐えうる粘度が必要です。

また、その上の層からの圧力を支える為、上の層が出力される段階で、下の層が十分に硬化している必要があります。

その為にはなるべく出力される材料の温度を低くする必要があります。

造形物の冷却
上記ノズル温度と同様に、上の層が出力される前に、下の層の材料を冷やして硬化させる必要があります。
その為に、造形物に冷風を当てて強制冷却することで剥離を防ぐことができる場合があります。
(ネット上で公開されている3Dプリンタ出力中の様子を写した写真で、扇風機を造形物に当てているものがありますが、この効果を狙っているためだと思われます。)

以上の点に注意すれば、サポート材を使用しないで出力できることが意外に多いことがわかりました。
«Prev || 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 || Next»