3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のY軸のバックラッシュとガタ

投稿 月 10/ 7 11:47:46 2013 | デジタル工作機 | hotall

前回の投稿では、「Y軸の精度が上がらない」問題は解決しませんでした。
今回は、より詳細に調べ、解決したいと思います。





問題の発端となったのは、フィラメントリールスタンドのディスクを出力した際に、サイズを検査した時のことです。
ディスクは正円にも係わらず、X軸方向とY軸方向でサイズが異なっていることに気づきました。
更に調べると、X軸方向は正しいのですが、Y軸方向が設定より短くなっているのです。




Y軸のスケール調整をやり直しても改善しません。




これは、おかしなことだと、更に測定方法を色々変えてみると、進行方向を変えた直後にずれが生じていることが分かりました。
ずれは移動距離に係わらず0.5mm短くなるように発生します。

この現象から、構造上のガタか、バックラッシュと呼ばれるギアなどの遊びによるものと考えられます。

考えられる原因を挙げてみます。
  • ネジの緩みによる部品接合部のガタ
  • ベルトの緩み
  • ベルトの伸び
  • ベルトとプーリーの遊び
原因を特定する為に、まず、Y軸モーターのプーリーを指で押さえ、ベッドを動かしてみます。これで、容易に動くのであれば、どの箇所まで動いているのか調べる事で原因を特定できるはずです。
ところが、ベッドはほとんど動かないのです。

見たところ、少なくともネジの緩みなどの問題ではなさそうなので、プーリーかベルトの問題であると仮定し、これらを個別に調べてみることにしました。



ベルトを外し、プーリーの状態を見ようと少し引っ張ってみると、はめるときは結構苦労したのに、簡単に外れてしまいました。
プーリーも3Dプリンタで作成されているので、穴には層状の凹凸があったのですが、これが無くなり、明らかに摩耗しています。
結局、プーリーとモーターの接合部のガタが今回の原因だったのです。
Y軸駆動系は厚いアルミ板やヒーターなど重い部品で構成されているので、ベルトやプーリーにはX軸駆動系よりはるかに負担がかかっています。
樹脂製のプーリーには、この負荷が耐えられないようです。




そこで、市販の金属製のプーリーを探すことにしました。
ところが、ぴったりとしたサイズのものが見つかりません。
なんとか内径以外は適合するプーリーは見つかったので、仕方なく、これを購入して加工することにしました。

大手国産メーカー 椿本チエインの製品です。歯も台形で、バックラッシュも少なそうです。
しかし内径は4mmです。




プーリーを加工するのに、手元にはハンドドリルしかありません。
プーリーを万力で固定し、ハンドドリルで穴を5mmに広げてみました。

広げることはできたのですが、手作業での軸合わせは難しく、案の定、中心がずれてしまいました。
幸い、歯の中央部分は中心だったようで、ベルトの端は多少揺れますが、中央の揺れはほとんどなく、何とか使えそうです。

やはり精密に加工するためには、ボール盤など、それなりの道具が必要ですね。




プーリーの穴周りに出っ張りがあり、これがモーターに接触するので、やすりで少し削りました。




モーターに組み付けました。
今回はねじ止めできるので、ガタも完全になくすことができます。

再度、Y軸スパンの測定と調整を行い、進行方向によらず、ずれはなくなったことを確認しました。

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のY軸ベルトのテンションとフレーム補強

投稿 金 10/ 4 17:22:20 2013 | デジタル工作機 | hotall

最近、私も年を取る毎にやる気が起きにくくなってきました。

やる気が起きる状態をテンションが上がると云いますが、この言葉、調べてみると和製英語だそうです。
本来、tensionは緊張を意味しますが、どうしてこれがやる気というプラスの意味に変わってしまったのかが不思議です。
「生活に張りがある」の言い方があるように、日本人は昔から緊張状態を好むのかもかもしれません。
しかし、最近ではゆるキャラが流行るなど、傾向が変わってきているようですね。




3Dプリンタが完成してから、何度調整してもY軸方向の精度が良くなりません。

これは駆動ベルトが緩んでいるのが原因ではないかと考え、張りを強くしてみました。
結果は多少精度が改善したものの、X軸に比べて精度は悪く、問題は解決はしませんでした。

更に困った事に、この対策過程で、ベルトの張りを強くするとフレームが容易にたわむ事が判明しました。
フレームの歪みは色んな箇所の精度に影響するので良くありません。この問題も解決する必要があります。

RepRapProのフレームは寸切りボルト(長ネジ)で構成されています。
この細長い棒は、押し引きの力には強いのですが、曲げの方向には弱いのです。
Y軸の駆動ベルトはボルトの中間部分に取り付けてあるため、ベルトの張力は、このボルトの曲げ方向にかかり、ボルトを歪めてしまうのです。
そこで、ベルトの張力で歪まないようにフレームを補強することにしました。



補強策として、ベルトの張力を支えるように前後のボルトを新たなボルトで固定します。
折角、組立・調整したフレームを分解したくはないので、ボルトを入れる個所はU字にして、ベルトの張力の方向だけを支える仕組みとしました。



ボルトを繋ぐ部品をAutodesk 123D Designで設計します。




3Dプリンタで出力します。




今回使用する部品です。
樹脂部品以外に市販のボルト、ナット、ワッシャを使用します。




ベルトのすぐ横に組み付けます。

この補強により、ベルトの張りを強くしてもフレームが歪まなくなりました。

ベルト張力による歪みがどれだけ影響しているかわかりませんが、少なくとも不安要素をなくすことができました。

下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
ボルト固定具2ダウンロード
寸切りボルト
(M6x250mm)
1市販品を切断
ナット(M6)4市販品
ワッシャ(M6)4

今回は本来の問題を解決することができませんでしたが、完全解決に向けてテンションを上げたいと思います。